カテゴリー: 雑録 -おもむくままにー


  • 釣銭の中に10円玉のような赤っぽい5円玉を見つけました。

    たしか5円玉って真鍮だと思っていましたが(違っていたらごめんなさい)、どうして赤く変色したのだろう?まぁ、そこまで熱心に調べるほどでもないですし、硬貨マニアでもないのでスーパーの支払い機に消えて行きました。

    今ごろ誰かの財布の中をめぐっているかもしれませんね。


  • むかしむかし、ある画家がいました。
    しかし、誰も彼の絵を評価するものはなく
    世に知られることもなく
    ひっそりと貧しいその生涯を閉じました。

    彼の死後
    残された作品が画商の目にとまり
    驚くような金額がつけられるようになりました。

    彼は
    貧しい生涯を悲しんでいたのでしょうか。
    あるいは、もう少し長生きしていればと残念に思ったでしょうか。
    誰にも認められない境遇を恨んでいたのでしょうか。

    同じ時代を生きた誰一人、その価値を理解できず
    2百年、3百年後の人々を驚嘆させたとしたら

    それは何かを創造していく人々にとっては
    まさに、至上の賞賛あるいは最高の栄誉なのです。


  • 大正末期から昭和初期にかけて
    といえばアメリカでは歴史に名高い禁酒法の時代である。
    この時期、カリフォルニア一帯を舞台にして活躍した日本人拳闘家がいた。

    まだティーンエイジャーだった中村金雄である。
    色白の細っこい少年拳闘家の中村は、リングに上がるたびに必ずノックアウトで試合を終わらせた。
    カリフォルニアは日系移民の多い地方で
    中村が対戦する日はロサンゼルス、サンフランシスコ、サンノゼ、サクラメントなどの日本人街から応援団が駆けつけた。
    そして、中村が勝つと邦字新聞の号外が出たという。

    中村金雄は非力なボクサーだった。
    顎もボディも弱く、一発パンチを食らうとダウンしてしまう。
    彼はその弱点をよく知っていたので、完璧な防御をマスターした。
    また、パンチ力もないので、カウンターを学んだ。
    相手が打ってくるところを巧みにかわして、カウンターを打ちこんで倒した。

    昨年の晩秋、ロスに行ったとき「ナカムラのこと知ってる」という八十八歳の日系女性に会った。中村を語る老女は懐かしさと誇りに輝いていた。
    ナカムラは決してハードトレーニングをしなかったという。
    練習量は他のボクサーの半分以下、その代わりに酒も煙草も女遊びもせず、いつも静かに笑っている素敵なボーイだった、と彼女は語った。

    中村の面影には時代離れした合理的精神を嗅ぎとることができる。
    すべてを犠牲にした牛馬のような猛練習の反措定として、あの少年ボクサーのことをいつも思い出すのだ。
    (昔読んだコラムから)